コンピュテーショナルファブリケーションによる半透明感制御手法

藤田紘樹 (1751102)


ファブリケーションとは芸術や工芸品の制作,工業製品の製作を意味する単語である.このうち,デジタルファブリケーションとよばれるコンピュータ制御によるものづくりが盛んに行われるようになってきている. 近年では3DプリンタやUVプリンタ,レーザーカッターなどのファブリケーション機器が広く普及してきており,これらを使用することでものづくりが誰でも簡単に行えるようになっている.ファブリケーション機器を用いると物体の形状を忠実に再現することが可能であるが,物体の見た目,質感を思い通りに制御することは現状困難である.

そこで,本研究では目に見える質感のうち半透明感に着目し,デジタルファブリケーションにおいて半透明感を制御する手法を2つ提案する.

 1つ目はUVプリンタを用い,半透明材質とUVインク印刷層の組み合わせによって印刷材質の半透明感を制御する手法である. 本手法では,印刷材質やインク1層ごとの反射率,透過率を計測し,層構造の定式化によって全体の反射率を推定し,印刷材質,UVインク色,印刷層数の組み合わせのうち再現したい半透明感に近いものを探索する.

 2つ目はカラー3Dプリンタを用い,事前に物体の反射率を変化させるテクスチャを計算し,モデルデータに適用し物体を印刷する手法である. 本手法では,間接的に物体を照らす光について着目し,コンピュータグラフィックスのレンダリングに用いられる近似的手法をデジタルファブリケーションに導入することで半透明感の制御を行う.

論文中で示す2手法はデジタルファブリケーションに質感を制御するための計算を加えている.これをコンピュテーショナルファブリケーションと呼称する.

本発表では,ファブリケーションにおける質感表現・制御について説明し,論文中で示した半透明感制御の2手法についてそれぞれ述べる.