通知情報調査システムの構築と端末側での適応的通知タイミング制御手法の提案

髙城 賢大 (1751063)


自由にアプリケーションを追加することができるスマートフォンが全世界に広がっている.インストール可能なアプリケーション数は,2017年時点で,iPhone向けのものだけでも210万本も公開されており,ユーザはそれぞれの目的に応じて多数かつ多様なアプリケーションをインストールしている.これらのアプリケーションには情報の到着をユーザに伝える通知機能が備わっている.通知機能は,定期的に発動するものもあれば,情報提供者から送られるPush通知というものもある.近年,この通知が多くなりすぎて,重要な情報に気づかない,そもそも通知を見なくなった,という問題が起きている.そこで,ユーザの状態(コンテキスト)を認識して割り込み通知のタイミングを最適化するという研究が広がっている.例えば,ユーザに動きを検知して,立ち止まっているときにまとめて通知をすることでクリック率(CTR)が改善されるといった研究が有名である.しかしながら,このような既存研究の多くは,対象となるアプリ以外は通知タイミングを制御しないアプリと想定している.将来的に,すべてのアプリが同じような通知タイミング制御を行う用になった場合,結局,通知の一極集中が発生し,通知タイミング制御の効果が発揮されないことが考えられる.また,インストールされているアプリがユーザ毎に異なるため,コンテキスト認識だけでなく,ユーザの端末に導入されている全てのアプリの挙動を考慮した通知タイミングの制御が必要であると考えられる.そこで,本研究では,まず,コンテキストに加え,全てのアプリの挙動を考慮した通知タイミング制御を適応的通知タイミング制御と定義し,この実現に向け,ユーザが受け取る通知の多様性調査及び制御モデルの構築とその評価を行なった.本稿ではまず,プライバシを排除しつつ通知情報を取得し続けるシステムを作成し,クラウドソーシングを用いて実際に収集した実験結果を報告する.次に,受け取るそれぞれの通知に対し,ユーザがクリックするか否かを予測するモデルの構築を行った.実験期間内の通知クリック回数が50回以下のユーザを除外し,14人から得た通知データを使用し,実際にクリックされる通知の予測モデルの精度評価を行なった.クリックやデリートなど,ユーザによる直前の通知アクションからの通知の蓄積件数をパラメータに加えることで,推定精度が大きく向上することがわかった.この結果から,端末側で全てのアプリの通知挙動を使用しタイミング制御を行うことは,通知のCTRを向上させる上で有効な手法であることを示した.