今日,フォーメションフライトやセンサネットワークなど,多様な分野において,マルチエージェントシステムが存在している. マルチエージェントシステムを対象とした重要な制御問題の一つに,合意問題がある.合意問題では,全エージェントが局所的な相互作用を通じて,特定の状態変数を一致させることを目指し,一致するに至る際の収束値や収束速度などを解析する. こうした合意問題は,ある時点での現実のネットワークを基にした静的ネットワークモデルや,隣接関係に確率が与えられた動的モデルが研究対象にされてきた.しかし,交通網や人間関係などの現実のネットワークを表現するためには,現実の時間変化に伴い頂点間の隣接関係が変化するような動的ネットワークモデルを用いること,そして,頂点自身が隣接関係を形成するようなネットワークモデルを用いることが重要である.
そこで,本発表では,activity-driven ネットワークと呼ばれる,各頂点の隣接関係が時間経過に伴い変化するようなネットワークモデルを用いた合意問題を検討する. 特に,本発表では,activity-driven ネットワークの収束率の上界を計算することで,収束性能を検討する. また,activity-driven ネットワークの収束性能解析に関して従来法を用いての計算が困難であることを示し,その課題に対し,現実のネットワークが疎であることに注目し,高々1つの頂点が隣接するような疎なactivity-driven ネットワークを提案する.それに伴い,疎なactivity-driven ネットワークの構造に規則性を証明し,収束性能解析を容易に行う方法を提案する.
また,論文共著者関係をはじめとした多くの生物・社会システムを表現するのに適した,simplicial activity-driven ネットワークを用いての収束性能解析手法も提案する.
最後に両モデルを用いてシミュレーションを行い,両モデルの真の収束率との比較検討や収束率に寄与するパラメータの考察について発表する.