測地線距離を用いた平面展開による\\古墳時代の甲冑の形状比較

世良京太(1751058)


文献史料に乏しい古墳時代の実態を解明する上で, 甲冑といった副葬品の調査は重要である. これまでの研究では甲冑製作において板金による部品製作のための平面的な設計図、いわば「型紙」の使用の可能性が示唆されている. その比較の際に各甲冑の三次元データをほぼ同じ角度にあわせた写真上で比較する手法をとっており, 甲冑の複雑な三次元の形状を考慮しきれないという問題があった. 本論文では甲冑製作における「型紙」の比較をより正確におこなうため, 甲冑の形状を決める重要な部品である後胴押付板の三次元データを平面に展開し比較する方法を提案する. 具体的には三次元レーザー計測で測定された甲冑の部品の三次元点群の任意の点間の測地線距離を求め, 多次元尺度法を用いて二次元データに圧縮しICPアルゴリズムを用い比較を行う. その結果, 複数組のよく似た形状の甲冑の部品が存在することが確認された.