複数の行動指標および fMRI 脳画像を用いたストレスに よる感情制御の仕組みの解明

鈴木 文丈 (1751057)


ストレスは複雑な決定をするための行動や脳機能に害を与えると言われており,場合によっては精神障害につながる危険性もあることが指摘されている.ストレスと行動との関係性としては,ストレスは恐怖などといった負の感情の適応反応を阻害する効果があることが報告されている.また,ストレスと脳機能との関係性としては,ストレス下では突出性に関連した脳領域と実行機能に関連した脳領域の間には時系列における変動があることが指摘されている.また,実行機能に関連した脳領域には,負の感情を適切に制御する機能もあることが報告されている.しかしながら,今までストレス時においてどのような感情が時系列における動的な変動を引き起こしていて,どのような感情に対してストレスの影響があるのかについてあまり研究されていない.さらに,ストレス時にどのような脳領域が感情成分毎に機能しているのかに関しても解明されていない.本研究では,ストレスを負荷させた後にfMRIの中で複数の感情指標を用いて画像評価を行い,それぞれの感情評価値におけるストレスの影響やストレス時における脳機能を画像の感情カテゴリ毎に比較することによって,上記の問題点の解決を試みた.

結果として,不快な画像を見ている時,感情指標の中でも負の感情に関連した指標は,ストレス時とコントロール時で異なる評価をしていることが統計的に明らかになり,さらに「悲しみ」に関しては時系列による動的な変動が確認できた.これは,ストレスは主に負の感情の評価に影響を与え,さらにその中には時間的な影響を及ぼしている指標もあることが示唆された.さらに,脳活動に関してはストレス条件下において,不快な画像を評価している条件が快の画像を評価している条件と比較して大きな活動をしていた脳領域として,実行機能に関連した脳領域が数多く確認できたが,コントロール条件では上記の結果は得られなかった.この結果は,ストレス条件時においては,実行機能が感情毎に機能しており,主に負の感情の制御に関して機能していることが示唆された.