自動走行時における車酔い抑制の座面傾け制御

櫻井 皓介(1751047)


近い将来に実現される自動走行運転環境では,運転手も搭乗者の一人となり,読書やテレビ鑑賞などの自由行動をとるようになることが知られている.しかし,搭乗者は運転手と異なり,自車挙動を予測することが難しいため,車酔いを発症する人が増加し,快適性を阻害する要因の一つとして考えられている.従来,運転手はカーブ走行での自車挙動の変化によって生じる遠心力を予測して,遠心力と反対方向へ身体を傾けることで発生する向心力により,頭部の横加速度を減少させ,車酔いを抑制している.この原理に基づいて,視覚提示やハプティクス提示によって,搭乗者の身体を遠心力と反対方向へ傾けるように誘導して車酔いを抑制する研究がされているが,傾ける角度やタイミングを厳密に制御する手法はない.

そこで,本研究では,座面傾け制御を実装できる座面傾け装置を用いて,搭乗者の頭部の横加速度を減少させ,車酔いを抑制することを目的として,搭乗者が受ける遠心力を打ち消す向心力を発生させる座面の傾けの角度やタイミングの制御方法を提案する.予備実験ではカーブ走行で発生する遠心力を測定し,提案手法から座面の傾け角度やタイミングを定める.提案手法である遠心力に基づいた座面傾け実験では,運転手と搭乗者の頭部の横加速度を加速度センサにより測定する.6名の被験者の実験結果から,搭乗者の頭部の横加速度を分類し,提案手法の有効性を検証する.これらから,遠心力に基づいた座面傾け制御は搭乗者の車酔いの抑制に有効であることを示す.