人の手のように万能な物体操作能力をロボットに実現する技術として,安定した把持を実現するロボットグリッパと,繊細な物体操作を実現する触覚センサの二つが注目されている.ロボットグリッパの中でも,柔軟材料を用いたグリッパは,物体の形状に沿って変形することで,大きな接触面積による安定した把持を実現することができる.一方で,このように高い柔軟性を持つロボットグリッパは高い自由度を有するため,高分解能な触覚センサを導入することが困難であった.
そこで本研究では,ジャミング転移現象による剛性制御とカメラによる光学的な触覚センシングを組み合わせたロボットグリッパ機構を提案する.提案機構の持つ柔軟な膜は,物体形状に沿って変形し,膜内部の粉体がジャミング転移現象と呼ばれる流動特性の変化によって硬化する事で,物体を拘束する.また,従来のジャミング転移現象を用いる機構は,空気圧によって制御されていたが,我々は制御流体としてオイルを用いるとともに,粉体とオイルの屈折率を非常に近づけることで,グリッパ内部を完全に透過させる.これにより,柔軟膜がグリッパ内部からカメラによって計測可能となり,膜の変形を用いた接触情報を取得することができる.提案機構を用いた二種類のグリッパを開発し,実験によって密な接触情報取得と膜の柔軟性を用いた物体把持機能が両立することを示す.