スナメリ( Neophocaena asiaeorientalis)の採餌行動におけるインタラクションの解析

誉田 実希子(1751042)


鯨類は高度な社会性を持つことが知られている. 多くの鯨類で協同的な採餌行動が観察されている. しかしながら, スナメリが採餌において協同関係を築いているかは未だ明らかでなかった. しかし, 近年, スナメリにも社会性を持つ可能性があることが明らかになって来た. 本研究ではスナメリの採餌行動を定量的に解析し, スナメリが採餌行動において他個体とインタラクションを行なっているか明らかにする.

私たちは, スナメリを観察する中でスナメリの採餌行動は大きく3つのフェーズ(オリエンテーリング, アプローチング, チェイシング)に分かれると考えた. 採餌行動の中でスナメリが急に加速するポイントを, アプローチングからチェイシングへフェーズか切り替わる特徴的な行動と考え, その時点をチェイシングの開始点として設定した. もっともスナメリに対する魚群の最近点を基準とし, 距離, 角度および曲率について解析を行った. 距離はスナメリと最近点間の距離, 角度はスナメリの進行方向と最近点間の角度, そして曲率は最近点周辺の曲率を示す. これらの3点においてスナメリの数によって異なるという有意差は認められなかった. また, 3点各々の間に相関性はなかった. この結果を受けて, スナメリの進行方向に偏りがあるか解析を行った. その結果, 複数の場合は偏りが見られなかったが, 単数では最近点に対して若干の右へ進行する偏りが観察された. しかし, 二項検定を用いた検証では偏りに有意な差は認められなかった. 結果として, 本研究においてスナメリの採餌時におけるスナメリ間のインタラクションは確認されなかった.