Q-RNSを用いた公開鍵暗号のIoT機器への実装に関する研究

郡 義弘


近年IoT機器の利用拡大に伴って、これを構成するエッジデバイスやその通信路を狙った攻撃が増加しており、これらの攻撃を防ぐ手段として通信路を流れるデータの暗号化がある。しかし、IoTネットワークにおいては、暗号技術の不適切な運用によるセキュリティの低下のみならず、IoTエッジデバイスとしてコストや消費電力の問題から計算資源に制限があるデバイスが使用されること多く、暗号技術の実装そのものが妨げられている。多数のデバイスが接続するIoTネットワークでは公開鍵暗号を用いた運用が必要であり、公開鍵暗号の中でも軽量である楕円曲線暗号がIoT機器に適しているが、実装時の回路面積コストの支配的な要因となっている剰余乗算は計算資源に制限があるようなデバイスでは従来の手法をそのまま実装することは困難である。そこで、低コストエッジデバイスで実装可能な剰余乗算器を構成すれば、より多くのIoTエッジデバイスで公開鍵暗号の運用が可能になると考えられる。

本発表では、Q-RNSを用いて剰余乗算器を構成する手法について提案を行う。また、RNS表現における基底数の違いによるエネルギー効率の差に着目し、最適な基底数を導出、この基底数を用いてスカラー倍算の実装と他手法との比較を行う。