回路改変を行った機器に対する電磁波を用いたデータ注入に関する研究

鍛治秀伍


電子機器に対する高出力な電磁波を用いた意図的電磁妨害(IEMI)は、環境電磁工学分野において、機器を破壊し可用性を損なわせる脅威とみなされてきた。一方、近年では低出力な電磁波を用いたIEMIによって機器の機密性や完全性を損なわせる可能性が報告され、IEMIが情報セキュリティ分野の問題としても議論されるようになった。従来までの低出力な電磁波を用いたIEMIの脅威対象は、潜在的に電磁波耐性が低い機器に限定されていたが、故意に電磁波耐性を低下させることができれば機密性や完全性を損なわせる脅威の対象となる機器の規模が拡大する恐れがある。

本発表では、機器の電磁波耐性を低下させる不正な回路改変により、従来までは脅威の対象外とされていた機器の内部に、低出力な電磁波を用いたIEMIを用いて任意データを注入できることを示す。さらに、こうした不正な回路改変に対抗するための対策技術についての基礎的な検討を行う。