コンピュータエージェントを用いた認知症検出のための質問分析と自動化手法

宇城 毅犠


認知症の早期発見には,定期的に高齢者の認知機能の状態を把握する必要がある. これまで,音声言語が高齢者の認知機能を反映させていることに着目して、音声言語を用いた認知症の検出手法が多く提案されてきた. その中でも,質問応答から認知症を検出する手法は,高齢者にとって課題の難度が低く,負担が少ない. しかし,同じ質問を提示する場合,高齢者が回答に慣れる可能性がある. 先行研究では,音声言語を用いた認知症の検出手法について検討されているが,音声言語を用いた認知症検出のための有効な質問については検討されていない. そこで,本研究では,音声言語を用いた認知症検出において有効な質問について分析した. 自己認識や自身の関心,遠隔記憶などに係る質問を用意し,カテゴリ別に検出能力を算出した結果,自身の関心に係る質問が高い検出能力(AUC値: 0.95)だった. また,本研究では,コンピュータエージェントの質問に対する応答から認知症を自動検出する手法も提案した. コンピュータエージェントは,13問の質問からランダムで5問を24人の参加者(認知症患者12名,非認知症者12名)に問いかけた. 質問への応答を記録し,音声区間を自動的に検出し,音声特徴と言語特徴を抽出した. 抽出した特徴量を用いて,機械学習アルゴリズム(L2正則化付きロジスティック回帰,L1正則化付きロジスティック回帰,線形サポートベクトルマシン)によって2つのグループ(認知症,非認知症)に分類した結果,ROC曲線のAUCで0.88の検出能力を示した. これは,認知症のスクリーニングテストで一般的に用いられるMMSEと同等以上の検出能力(AUC: 0.85)であり,コンピュータエージェントを用いて認知症の自動検出する手法の有用性を示した. 本発表では,先行研究を紹介し,音声言語を用いた認知症検出において有効な質問について詳しく述べる.