Time-of-Flightカメラを利用した半透明物体の散乱特性に基づく材質判別の検討

井上 裕太 (1751010)


計測対象が明確な形状やテクスチャを有している場合,機械学習による物体認識は非常に有効な手法である.しかし,形状やテクスチャに制限がない場合に対応できない課題がある.そのなかで,物体の特徴の一つである材質を判別することが物体認識に利用できると考えられる.本研究は物体の材質判別を目的とし,Time-of-Flight(ToF)カメラの計測に現れる半透明物体の表面下散乱光より,散乱特性に基づいた材質判別手法を検討する.ToFカメラの計測では,光源から出力される光の波形と観測光の波形を比較することで,波形の位相差による位相画像と観測光の強度を示す振幅画像を取得可能である.位相画像では,表面下散乱による光路長の増加が時間遅れ量に影響することで,材質の散乱特性に応じて位相が変化する.一方振幅画像では,観測光波形の取得方法に基づき人間の目や通常のカメラの観測光強度と異なる値が観測され,この変化量も材質の散乱特性の影響を受けている.本研究では,ToF計測における散乱光の影響をモデル化し,振幅画像と位相画像に現れる材質固有の変化量の観測を提案した.最後に,シミュレーションおよび実環境実験によりその有効性を検証した.