利用可能技術に応じたヘッドマウンテッドディスプレイ型拡張現実感作業支援システムのための設計指針

安藤 瑞希 (1651004)


拡張現実感は眼の前の現実に対してコンピュータで生成された情報を重ね合わせて表示する技術であり,実世界上の作業対象とマニュアル上の支援情報を関連付けた提示が可能であるという点から,作業支援分野で様々な研究が行われている.また,拡張現実感アプリケーションを作成する際の支援ツールとして多くの研究者や企業が設計指針を提供している.このように,実作業の支援に有用且つアプリケーションを開発のためのツールも多く存在するにもかかわらず,実際の作業現場での拡張現実感の普及は進んでいない.これは,拡張現実感技術が作業を行う環境によって性能が大きく変化することが原因である.

拡張現実感アプリケーションは,トラッキング技術を用いることによって,あたかもコンテンツが現実世界に存在するように情報を表示している.しかし,基準となる情報が存在しない真っ白な空間や暗所ではトラッキング技術を利用することが困難である.現存する拡張現実感アプリケーションの設計支援コンテンツは,このような環境を想定していないため,設計者は実用的なコンテンツを作成できていないという現状である.

そこで,本研究ではトラッキングを用いない情報の可視化手法も作業支援方法として視野に入れ,実際の作業環境で利用可能な技術レベルごとに可視化手法を分類することで,従来のトラッキング技術が利用できる環境に加え,一部のみ利用可能な環境や一切の利用が困難な環境に対しても実用的な支援コンテンツを設計できるような設計指針の開発を行った.開発した設計指針については,作業支援コンテンツを作成したことのない初心者に組立作業を支援するアプリケーションの設計を実際に行ってもらい,その堅牢性について確認した.