長期間の学習による価値の形成に関わる脳機構の解明
米川 柾(1651126)
人の行動には安定的行動と柔軟的行動という2つのタイプの行動があると示唆されている.
動物を用いた神経生理学的研究及びヒトを用いたニューロイメージング研究によると, これらの行動のタイプは, 大脳基底核中の線条体の異なる部位で処理されている事が示唆されている.
しかし, 先行研究では安定的・柔軟的行動を調べる課題がヒトと動物で大きく異なっているという問題がある.
例えばサルを用いた先行研究では, 安定的行動の動因となる価値の獲得のために,
数週間から数ヶ月の単位での長期間の価値学習課題を用いていた.
一方ヒトでは, 短期間の運動系列学習課題を用いた実験がほとんどである.
さらに,安定的・柔軟的行動を調べる既存の実験パラダイムでは,これらの行動は独立なものとして扱われている.
そこで本研究では, 20代の健常者11名を対象に, 3週間の価値学習課題を行い,
ヒト機能的核磁気共鳴法を用いて課題時の脳活動を計測することで, 長期間の安定的行動獲得に関わる脳領域を同定した.
加えて, 長期間学習させた価値を変える課題を行い, 柔軟的行動獲得に関わる脳領域も調べた.
結果として, 線条体の後方が安定的行動の獲得に関わること, また安定的行動が強いほど線条体の前方部が,
柔軟的行動が強いほど線条体の後方部に価値が表象されることがわかった.