光ファイバ無線を用いた次世代地上デジタル放送波中継

吉田 翔 (1651122)


 現在,地下街などの電波の届かない電波不感地へ放送信号を中継するために光ファイバ無線(RoF:Radio over Fiber)が運用されている.現行のRoFシステムでは,放送信号の信号形式を保存しながら伝送するパススルー方式が用いられており,単一波長のレーザ光を変調する構成となっている.放送信号はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号で生成されており,光変調の際には,被変調信号の振幅値を光強度に直接変調する強度変調方式が用いられている.無線信号の検出にはフォトディテクターによる直接検波を行う.

 一方で,次世代地上デジタル放送の実現に向けてNHKや総務省が主導となり技術基準の検討を行なっている.地上デジタル放送では,現状のフルハイビジョン画質を超える4K及び8Kの映像が提供されるようになり,その画素数はフルハイビジョンの4倍,16倍になる.このような高画質の映像を送信するために高いデータレートの放送信号を設計する必要がある.放送信号のデータレートを向上させるための手段として,複数のアンテナを用いる MIMO(Multiple-Input Multiple-Output),1つのキャリアがもつ情報量を増加させるために変調多値数を増やした超多値変調,同一時間,同一周波数の領域で多重化を行うLDM(Layered Division Multiplexing)などの技術を用いることが検討されている.しかし,次世代の仕様の信号をRoFによって中継可能であるかどうかはまだ検討されておらず,現行の中継システムを次世代においても使用可能であるか検討する必要がある.

 本発表では,現行のRoFシステムの構成を変えずに次世代の所要データレートを満たす信号を設計可能な超多値変調を用いた場合とLDMを用いた場合の2つの方式について,計算機シミュレーションを用いた評価結果を報告する.