快情動プライミング影響下における時間選好に関わる神経基盤の解明
山本諭 (1651119)
意志決定の際、報酬を獲得できるまでの時間を考慮する必要がある。時間選好とは遅延報酬(長期報酬)に対する即時報酬(短期報酬)の好みの度合いである。この指標となる時間割引率は主に個人特性として扱われるが、個々人の状態により変動することも知られている。特に快情動を惹起された際の時間割引率が上昇するという知見が多く存在する。しかし、快情動による時間選好に関わる神経基盤への影響は明らかにされていない。そこで、快情動の時間選好への影響を脳情報から明らかにするために、快情動プライミング影響下での時間割引課題を実行中の脳活動をfMRI(磁気共鳴機能画像法)で計測し、脳活動データから機械学習を用いて刺激を読み取る手法であるデコーディング解析及び類似度解析を行った。報酬選択のデコーディング解析により短期・長期報酬選好を表現する脳活動パターンを同定し、類似度解析で時間選好に関わる脳領域への快情動の影響を確認した。その結果、短期・長期報酬選好を表現している脳活動パターンの存在及び、短期報酬選好を表現する脳活動を快情動が調節し、時間割引率を上昇させていることが示唆された。