部分最小二乗法を用いた肝臓形状特徴に基づく肝線維化ステージ分類 -血液生化学検査及びMRエラストグラフィとの比較-

森口和也 (1651113)


肝線維化は硬化した肝組織が蓄積する状態であり,進行度に応じて,F0~F4の5つのステージに分類される. 線維化ステージF4は肝硬変であり,肝細胞癌の発生の危険性が高く,線維化を早期に発見することは重要である. しかし,肝臓は再生機能が高く,軽度の肝障害では症状が現れず,症状が悪化してから肝障害が発覚することが多いため,線維化早期での発見が求められている. 現在,線維化診断の主流である肝生検は侵襲的であり,代替の方法として,肝臓の弾性率 (Liver Stiffness)を計測するエラストグラフィや血液生化学検査が使用されている.

肝臓形状による診断はモダリティや造影・非造影に関わらず,他の診断で撮影した腹部三次元画像があれば,副次的に線維化を診断できる. 本研究では,形状による診断の従来法の個人差による形状の違いと疾患による形状の変化が分離できない問題点が改善するため,部分最小二乗法を用いて線維化に伴う形状の変形を抽出する手法を提案し,従来法と提案法の両方で線維化ステージの分類を行った. その結果,提案法は,F0&1vsF2,3,4の分類で平均AUC:0.871±0.035, F0&1,2vsF3,4の分類で平均AUC:0.775±0.055, F0&1,2,3vsF4の分類では平均AUC:0.761±0.047を示した. 全ての2クラス分類において,対応のあるt検定を行った結果,提案法は従来法に比べ,p<0.01の水準でAUCが向上した.

提案法と血液生化学検査のスコアFIB-4,MRエラストグラフィで計測したLiver Stiffnessとの比較では,いずれも,提案法のAUCが下回る結果となったが, 線維化初期であるF0&1,2vsF3,4の分類においては臨床で使用されるFIB-4とLiver Stiffnessと比べ,AUCの差分-0.05,-0.071まで大きく近づくことができた. また,F0&1,2vsF3,4において,FIB-4で正しく分類できない症例でも,提案法で正しく分類できた症例があり, 両者を組み合わせた相補的な分類精度の向上が示唆された.