外部知識上の推論により構築した特徴量ベクトルを\\用いた対話状態推定

村瀬 行俊 (1651108)


対話システムにおいて対話状態推定の精度向上が応答精度の向上に重要であることが知られている.対話状態推定は,ユーザの各発話からそれまでに行った対話の履歴を 考慮してユーザの状態を推定するモジュールである. 近年では,機械学習モデルであるニューラルネットワークにより対話状態推定を行うことで精度が向上している.機械学習モデルの入力では発話文から得られる特徴量をベクト ル化して用いている.ただし,入力文の観測した特徴を用いるような単純な特徴量ベクトルではベクトル空間が疎になり,機械学習モデルでは統計値を取れない問題がある. この問題はデータスパスネス問題と呼ばれている.発話文で観測した情報だけを用いることで特徴量ベクトルを構築していることが,この問題の一因であると考えられる.そのため, 発話文で観測した情報を外部の知識により拡張することで多くの情報を持つ特徴量ベクトルの構築ができ,これを機械学習モデルの入力として用いることで統計値を取ることが 可能になると考えられる.外部の知識から発話文で観測した単語のエンティティと関連のあるエンティティを抽出することで情報の拡張が行える.このように抽出した情報をグラフ構 造化し,観測済みのエンティティから未観測のエンティティをグラフ上で推論することで拡張した情報を含む特徴量ベクトルの構築が可能になると考えられる. 本研究では,ユーザ発話から得られた観測済み情報を元に外部知識上での推論を行う事で周辺知識からなる特徴量ベクトルを構築する.外部知識には知識ベースである Wikidataを用い,推論にはラベル伝搬法を用いる.ここで構築された特徴量ベクトルを全結合ニューラルネットワークの入力として用いて対話状態推定を行った。また,畳み込み ニューラルネットワークと組み合わせたアンサンブルモデルにより精度の向上を確認した.