動体検知センサを活用した宅内生活行動認識手法

藤原聖司 (1651093)


省エネ家電制御などの生活を支援するサービスの実現には,多種多様な宅内の生活行動を正確かつ安価に認識できることが重要である. 本研究の先行研究では,電力計と位置センサを使って10種類の生活行動を平均79.4%で推定することに成功している. しかし,読書といった,家電製品を使用せず,場所に関係なく行われる生活行動(場所非依存行動)を正確に検出・認識することは困難であった(課題1). 課題1を解決するためのアプローチの一つとして,各場所非依存行動がとられる際の人体のモーションを利用する手法が考えられる. しかし,ウェラブル機器を使った方法は装着負担が(課題2),カメラを使った方法はプライバシー侵害が(課題3)課題となる.

本発表では,課題1から課題3を解決する方法として,動体検知センサと機械学習を用いた場所非依存行動認識手法を提案する. 動体検知センサは電磁波により動きを検知するセンサで,代表的なものとして赤外線を利用した焦電型赤外線センサやマイクロ波を利用したドップラーセンサがある. また,これらのセンサは人体の動きの速さに応じて出力信号の周波数成分を変化させる特性を持っている. 最初に,アナログ出力焦電型赤外線センサを使用し,行動によって生じる体動の変化を周波数成分として取り出し,機械学習を用いて行動を認識する手法を提案する. 予備実験の結果,アナログ出力焦電型赤外線センサは検知距離が短く,部屋全体をカバーするには多数のセンサが必要となることが分かった. そこで,提案手法を,より検知距離の長いドップラーセンサから得られる周波数成分から行動認識する手法に拡張する. アナログ出力焦電型赤外線センサを用いた手法の有用性を評価するため,被験者5名が食事,PC操作,読書,スマートフォン操作の4行動を行い,センサデータを収集した. 10分割交差検証を行った結果,平均認識精度は63.9%となった. また,ドップラーセンサを使った手法を評価するため,被験者6名がソファとテーブルでPC操作,読書,スマートフォン操作の4行動を2回ずつ行い,センサデータを収集した. 交差検証の結果,45.9%の認識精度となった. 以上から,赤外線センサを使った手法により,場所非依存行動が十分認識できること,ドップラーセンサを使った手法は広いエリアをカバーできるものの,赤外線センサを使った手法より低い認識精度となり,今後の改善が必要なことが分かった.