平常時・避難時における人の流れを考慮した道路網のリスク分析

藤井 公大 (1651092)


大規模災害に対しては,災害発生前後の防災と減災の両面での対策が重要となる. 減災の観点では,スマートフォンなどのモバイル端末を用いた避難誘導方式やアプリケーションの研究開発が進められている. 一方,防災の観点では,地震等の災害時に沿道建物の倒壊により道路が閉塞する確率(道路閉塞確率) や人の流動を表現したデータ(人の流れデータ)が一般に公開されている.本論文では,避難誘導方式・ 道路閉塞確率・人の流れデータに基づく,平常時・避難時の人の流れを考慮した道路網のリスク分析手法を提案する. まず,各道路の平常時の利用頻度(平常時道路需要)を人の流れデータを用いて導出する. 次に,平常時道路需要を避難者の避難開始位置の地理的分布とみなし,避難時の経路選択を考慮した辺媒介中心性を用いることで, 各道路の避難時における利用頻度(避難時道路需要)を導出する. 道路閉塞確率と避難時道路需要を組み合わせることで,避難時に道路閉塞と遭遇するリスク(閉塞道路遭遇リスク)の高い道路を検出する. 数値実験により,提案手法を用いることで閉塞道路遭遇リスクの高い道路が検出可能であることを示す. また,平常時の人の流れ,避難行動,災害発生時刻によって,検出される道路が空間的に変化することを示す.