コンタクトイメージングにおける光線の屈折変位量の撮像と可視化

西川雅清 (1651082)


レンズレス顕微鏡とは,イメージセンサ上に直接被写体を置き,上部の点光源により被写体を照らして撮影するコンタクトイメージングを用いた小型の撮像装置である. 本研究では,コンタクトイメージングにおいて,観察対象である細胞の表面形状や内部構造の観察を容易にするため,細胞での光線の屈折による変位量を撮像する手法を提案する. 屈折変位量とは細胞表面への入射角度に応じて生じる屈折現象を主要因とする光線の変位量であり,観察時にこの情報を提示することで細胞の立体構造の把握の新たな手助けになると考えられる. 点光源と細胞の間に挿入したストライプマスクをシフトさせながら撮影した入力画像群を用いて,イメージセンサ上での光線が到達する位置の変動を求め,屈折変位量を算出する. コンタクトイメージングを模した環境での実験により屈折変位量が算出できることを確認し,屈折変位量を疑似色で可視化した. さらに,撮像方法を拡張することで2次元の屈折変位量の可視化を実現し,複数周波数を利用したアンラッピングによって可視化可能な屈折変位量の範囲を拡大することに成功した. 加えて,実際のコンタクトイメージングの環境で撮影したウニの受精卵に対して実験を行い,提案手法の有効性を検証した.