散乱解析のための単一散乱領域と拡散領域の特定
坪田一総 (1651072)
半透明媒体の散乱パラメータを計測する際,その媒体の散乱状態として単一散乱や拡散を仮定する.散乱状態はその媒体の濃度と媒体を光が進む深度を表す光学的濃さに依存する.そのため,単一散乱や拡散を仮定できるよう,媒体の濃度や厚さが調節される.しかし計測に適切な光学的濃さは明らかではなく,その条件は観測光の波長にも依存する.本研究では対象媒体において単一散乱や拡散状態を仮定可能な媒体の光学的濃さと光の波長の領域をそれぞれ単一散乱領域,拡散領域と呼び,散乱パラメータの推定結果の安定性を手がかりに各領域を特定する手法を提案する.実験では,分光カメラを用いてランベルト・ベールの法則に基づいた透過型計測を実施し,牛乳と豆乳を対象として単一散乱領域を特定した.また,拡散方程式に基づいた変調周波数パターン投影によってロウを対象として拡散領域を特定した.その結果,長い波長では光学的濃さが小さいところ,短い波長では光学的濃さが大きいところで単一散乱領域外となることが確認できた.また,RGB3つのチャネルにおいて0.061--0.18$[mm^{-1}]$の周波数で,拡散領域とみなせることが確認できた.