被災地での現実的な問題を考慮した救援物資配送スケジューリング

田中 雄大 (1651070)


政府が指定する激甚災害をはじめ,地震や台風などの自然災害は各地に大きな被害を与える.それら災害発生後の各避難所への物資配送に関して,一般の行政機関なども普段携わらない配送業務に加わると,各機関や運送事業者との情報共有,物資の仕分けなどが適切に行われない場合がある.それらの結果,物資の配送に大きな混乱が生じ,各避難所へ届く物資の偏りの問題が多く起きている.この問題に関して様々な研究が行われているが,既存研究で扱う品目の数は必ずしも多くなく,各避難所へ配送する前の複数の拠点(配送拠点)間でも物資量の差が指摘されている.

そこで本研究では,被災直後から複数の避難所へ多品目の物資を的確に配送するためのロジスティクス・モデルを提案する.提案モデルでは前述の問題を解決するため,複数品目の物資や配送トラックを配送拠点間で振り分ける「リバランシング」を行う.また,各避難所からの物資の需要に対する充足率の偏りを軽減するため,全避難所の充足率の平均(平均充足率)ではなく,Softmin関数から得る値を評価値として,最適化手法を用いて配送ルートのスケジューリングを行う.本論文では最適化手法として遺伝アルゴリズム(Genetic Algorithm, GA)を用い,シミュレーションによる他手法との比較結果から,平均充足率の低下を抑えつつ,各避難所の充足率の最低値(最低充足率)が上昇するのを確認した.