自律分散型光環境制御システムの開発と制御

高本 雄太 (1651068)


快適な光環境の実現や省エネルギー化の推進において,照明システムの高度化は重要な課題である.しかし,従来の照明システムでは,照明の点灯パターンが電気配線やスイッチなどで固定されていたり,カーテンやブラインドといった遮光装置においては開閉操作の煩雑さから終日全閉とされていることが多く,人や環境の変化に応じて柔軟に照度提供を行うことは困難であった.この問題に対し,これまでいくつかの先行研究において,「複数の照明機器を個別に制御する」というアイデアに基づいたスマート照明システムが提案されてきた.しかしながら,点灯パターン決定に大掛かりな最適化アルゴリズムが必要であったり,照明光と自然光の組み合わせが考慮されていないといった課題があった.

本論文では,照明光と自然光を併用しつつ,任意の場所に適切な照度を提供可能な自律分散型光環境制御システムを提案する.提案システムは,複数の照明と遮光/透光を制御可能な複数の窓から構成される.このため,照明の点灯パターンと窓の遮光パターンを適切に決定することで,照度分布を柔軟に制御することができる.各照明と窓には分散制御器が搭載されており,それらはネットワークによって結ばれている.各分散制御器は互いに情報交換をしながら,適切な点灯/遮光パターンを決定する.本論文では,まず,提案システムの点灯/遮光パターン制御問題の定式化を行った.つぎに,制御問題の解として,与えられた目標照度分布をもとに適切な点灯/遮光パターンを求める分散制御アルゴリズムを提案した.最後に,提案システムの有効性を確認するために数値シミュレーションと実験を行った.