ワンウェイ方式カーシェアリングにおける潜在的利用者を活用した予約受諾率最大化手法

千住 琴音 (1651066)


近年,都市部で車の所有に伴う経済的負担を理由にカーシェアリングサービスが増えている. 特に最近では,2014年の法整備により運営可能となった移動先で車を乗り捨てるワンウェイ方式カーシェアリングサービスが開始されつつある. しかしながら,ユーザの利用要求は一定ではないため,特定の場所に車両が集中する車両偏在問題が発生することとなる.

本研究では,ワンウェイ方式カーシェアリングサービスにおける車両偏在問題を解決し利用予約の受諾率を向上させるために,潜在的利用者に車両の利用を促すことで車両を必要な場所に移動する手法を提案する.本手法では、利用者に予約(要求トリップ)に加えて,未予約の潜在的利用者に対する依頼(依頼トリップ)を導入する. 依頼トリップの実現には(1)最小の依頼で車両偏在問題に対する最大の効果(トリップ成立数の最大化)を得るための依頼トリップ区間の導出手法と、(2)その依頼トリップを受諾する可能性の高いユーザの抽出という2つの大きな課題を解決する必要がある。本研究では、(1)については、シミュレーションにより仮想的なワンウェイ方式カーシェアリングサービスを構築し,車両の適切な移動方法について検討する. (2)については,実際のワンウェイ方式カーシェアリングサービス事業者から得られる実データを分析し、実利用者の行動特徴を明らかにするとともに,その結果に基づいて依頼戦略を検討する.

本研究では,まず,本大学付近での運用を想定したケーススタディにより提案手法の有効性を検証した.その結果,依頼トリップを導入することで,より多くの要求トリップに対応できることを確認した.また,より現実的な設定のもとでのシミュレーションを実施するために,6拠点における30分スロット式予約のシミュレーションを実施した.ここでは,潜在的利用者の受諾率に着目し,受諾率の変化による成立要求トリップ数または依頼トリップ数の変化を確認したところ,受諾率の増加に伴い要求トリップ数が増加することを確認した.また, 依頼トリップ1件に対する要求トリップ増加件数は受諾率40%と60%のときが最も大きくなり,その後はほとんど変化しないことがわかった. また,サービス事業者から得られた実証実験のデータを分析し,利用実態を分析した結果,特定の経路のみを使用する利用者だけでなく,様々な時間帯やステーションを幅広く利用する利用者が存在することを確認した.この結果に基づいて依頼トリップ戦略を検討した結果,様々なステーションに分散して利用する人々とあるステーションを中心に様々なステーションを利用する人々が依頼トリップをより受諾しやすい潜在的利用者である可能性を示した.