運転手の注意誘導のための視線挙動特性に基づく視認推定

阪口栄穂 (1651051)


 自動車の運転時において、歩行者などの注意すべき人や物体に運転手の注意を適切に誘導することは、運転の安全性を向上させる上で重要である。自動車運転等を対象とした注意誘導システムにおいて適切な誘導を行うためには、運転手が物体を視認したか否かを推定する必要がある。これまでに視認の有無を推定する検討が多くなされている。多くの従来手法では物体と視線の方向に関する一律の条件で視認の有無を識別しており、物体の視覚特性による視認性の差異を考慮していない。我々は物体の視認の難しさを視認難易度と定義し、移動するターゲット刺激を視認する際の視線挙動を計測する実験により、視認難易度とターゲット刺激視認時の視線挙動の関係性を分析する。分析の結果、視認難易度を考慮して視線挙動を評価することで、より適切に視認を推定できることが示唆される。また、視線挙動がターゲットの要因ではなく、視認難易度によって異なることを明らかにする。加えて、同じ視覚特性のターゲット刺激であっても個人ごとに感じる視認の難しさは異なり、個人毎の視認特性の違いを反映した視認難易度という尺度を用いることによって、より適切に視線挙動を表現できることを明らかにする。さらに実際に利用される場面を想定し、リアルタイムな視認推定を実現するため、視線挙動とターゲットの視認難易度に基づいて、機械学習による視認推定手法を実装しその評価を行う。実験結果から、視線挙動とターゲットの視認難易度を特徴量として学習することで78%程度の推定精度で視認の有無が識別できることを示す。視線挙動及び視認難易度を用いることで視認推定が可能となり、快適な注意誘導システムの実現が可能となることが示唆される。