ローリングシャッター効果を用いた可視光通信における調光手法

堺井大地 (1651050)


照明器具などへ可視光LEDが急速に普及し,可視光LEDを用いた通信,いわゆる可視光通信(Visible Light Communications; VLC)が新しい通信インフラとして注目されている.可視光通信は通信内容に合わせて送信側が発光し,受信側が光の明滅を認識することで無線通信を実現する通信方式である.可視光通信は従来,受信側で専用のモジュールが必要であった.そのため汎用性が無く,特定の条件でのみ利用されていた.この問題に対して,多くのスマートフォンのカメラに搭載されているローリングシャッターの特性を利用し,可視光通信を実現する研究が行われている.しかし既存研究ではLEDの調光に対応しておらず,LEDに負荷をかける問題がある.また,光の干渉に弱い問題もある.

そこで本研究では,ローリングシャッター効果を用いた可視光通信において,LEDへの負荷が少なく,調光可能な方式を提案する.提案する調光方式ではパルス幅変調(Pulse Width Modulation; PWM)を用いて情報を符号化し,発光タイミングの比率(デューティ比)によって調光を実現する.また,送信対象のデータに検出用の符号を付加することで,光の干渉への耐性を高める. 提案方式は送信側発光器とWebカメラをつないだ受信側PCによって実装し,評価実験を行った.実験結果から,提案方式および実装システムがデューティ比によって複数の段階に調光できることを確認した.また,異なるデューティ比での結果を比較し,伝送速度やビット誤り率への影響を確認した.