時間軸超解像計測と単一光子計数を用いたシーンの光学的な時間応答の解析
北野 和哉 (1651041)
従来,シーンの認識や物性の解析,物理現象の可視化など幅広い分野において光学的現象の解析が行われてきた.
特に近年では,計算能力の向上や半導体技術の進歩によってサブナノ秒からピコ秒単位における光の時間応答の計測が可能となった.
超短時間光を照射した際に反射光として得られる時間応答は物体の物理的な性質を反映しているため,物体の材質や形状などの物理的な情報を含んでいる.
物体の時間応答を計測することによって,細胞の蛍光を観測する時間分解分光やプラズマなどの物理現象の撮影,生体の活動量計測など物理的性質を詳細に分析することが可能となる.
また,コンピュータビジョンの分野においても,物体の質感や材質の認識,散乱や屈折,相互反射など物体内で発生する光学現象の解析に用いられている.
しかしながら,光の時間応答を計測するためには,高価なデバイスや複雑な光学系などが必要となる.
そこで,本研究は,距離計測デバイスであるToFカメラを用いた時間軸超解像計測と単一光子計数の2つのアプローチよりサブナノ秒からピコ秒単位の時間応答の推定を簡易なデバイスと計算の工夫によって実現した.
時間軸超解像計測では,ToFカメラの光源と撮像素子の間にプログラマブルな遅延回路を組み込むことによって時間軸に低解像度な画像を複数枚撮影し,それらの画像群を超解像問題の応用による逆演算によって250ピコ秒単位の時間応答の計測を行った.
単一光子計数では,100ピコ秒程度の高速な%光センサである1画素のSilicon PhotoMultiplierとピコ秒単位の時間計測が可能なTime to Digital Converterを用いて単一光子計数を行い,逆演算により数十ピコ秒程度の時間応答の計測を行った.また,それぞれの計測装置を用いて相互反射や透過,散乱などが発生するシーンの解析を行った.
光センサである1画素のSilicon PhotoMultiplierとピコ秒単位の時間計測が可能なTime to Digital Converterを用いて単一光子計数を行い,数十ピコ秒の時間分解能で観測波形の計測を行った.
また,それぞれの計測装置を用いて相互反射や透過,散乱などが発生するシーンの解析を行った.