ピアのchurnに対するTit-for-Tat型P2Pファイル配信のロバスト性評価

香山 侑槻 (1651034)


P2Pファイル配信におけるフリーライダー問題の抑制には,ピア間のピースの交換を促すTit-for-Tat~(TFT)戦略が有効であることが知られているが,TFT型P2Pファイル配信の最適性については十分に明らかにされていない. そこで本論文では,ピアの途中離脱と途中参加で構成されるchurnに対するTFT型P2Pファイル配信のロバスト性を分析する. 具体的には,ピアのchurnの前後の状況に着目し,それぞれにおけるファイル配信を最適なピースフローの決定問題として定式化する. この問題は整数線形計画問題として定式化できるため,既存の線形ソルバにより最適解を導出できる. 数値実験により,まず,1台のピアの途中離脱のみが発生する場合に着目した場合,途中離脱するピアの保持するピースの希少性の最大値が高いほど,残されたピアの平均ファイル取得時間が劣化することを示す. また,機器の故障やサービス品質へのユーザの不満など離脱の要因によるシステム性能への影響の違いを示す. 最後に,ピアの途中離脱と途中参加で構成されるchurnに対しては,churnの規模,発生時点によらず,churnが生じない場合と比較してシステム全体の平均ファイル取得時間があまり変化しない,すなわちchurnに対するロバスト性を有することを示す.