畳み込みニューラルネットワークと解剖学的知識を用いた腹部造影CT画像からの腎動脈枝の自動抽出

小野 真理子 (1651030)


腹部血管は,分岐構造や本数といった,血管パターンの多様性が非常に大きいため,血管の構造情報を医師に提示することは,診断精度の向上等において重要である. そのため,3次元CT画像から血管領域を計算機で自動的に抽出し,画像診断や治療計画に用いることが望まれる.

本研究では,腹部血管の中でも特に分岐パターンの多様性が大きい,腎動脈枝の抽出を目標とする.

これまでに多くの血管自動抽出の研究が報告されているが,なかでも,血管が線状の形をしていることに着目して,線強調処理を血管の抽出及び,血管認識の前処理として用いているものが多く報告されている. しかし線強調処理は,細い血管や,血管に近い画像エッジを持つ骨等の過抽出が発生し,これらの課題が後に続く動脈枝の抽出処理に悪影響を及ぼしていた.

提案手法では,近年画像処理の分野で広く活用され,医用画像の分野にも幅広く使用されている,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて動脈枝識別器を作成し,従来の手法では強調が容易でなかった動脈枝の強調処理の精度向上を目指す. 手動セグメンテーションを行った腹部血管造影CT画像30症例を用いた実験を行い,AlexNetベースのネットワークで作成した血管識別器,U-Netで作成した血管識別器と,線強調処理を比較した結果,CNNを用いた血管抽出精度の向上を確認した.