スプリントトレーニング支援のための多視点全天球カメラ映像からのピッチ・ストライドの推定
大内 勇磨 (1651021)
スプリントトレーニングは,主にスプリント動作の改善を目的として行われてい
る.そのため,ピッチやストライドなどの走速度の決定要因となるデータの測定が
重要となるが,日常のスプリントトレーニングにおけるデータの収集は,タイムの
計測にとどまっているという現状がある.一方で,ピッチ,ストライドに関しては
アスリートまたはコーチの主観によって分析が行われている.より効果的なスプリ
ントトレーニングを実現するためには,日常のスプリントトレーニングにおいて
ピッチ,ストライド,スプリント動作のデータを収集・分析し,アスリートまたは
コーチにフィードバックする必要がある.スプリントパフォーマンス分析のための
データ収集を目的として,様々な計測装置を用いた手法が提案されている.しかし
ながら,これらの手法の多くは,セットアップが煩雑,実際の競技環境の再現性が
低い,データのフィードバックに時間がかかるといった問題があり,トレーニング
現場での利用は難しい.これに対して,オプトジャンプなどのように設置が容易で
あり,実際の競技環境と近い状況でのデータ収集を可能とする手法がある.これに
より,ピッチ,ストライドの情報を即時にフィードバックすることが可能となるが,
スプリント動作を確認するためには各センサに加えてカメラを用いた動作映像の撮
影が必要となる.そこで,本研究では,カメラ映像からピッチおよびストライドの
計測を行うことで,これらの情報とスプリント動作のデータを同時に収集可能なフ
レームワークを提案する.具体的には,走路周辺に設置した複数の全天球カメラ映
像から三次元足関節位置の軌跡を推定することで,ピッチおよびストライドの推定
を行う.実験では提案手法の有効性を示すために,手動で取得した真値との比較によって三次元足関節位置,ピッチ,ストライドの推定精度の評価を行った.その結果,それぞれの推定手法が要求精度を十分満たすことが確認された.