主成分分析の逆問題としてのマルチビュー学習問題

石谷 智之 (1651010)


近年, 様々な分野で対象集合が複数の視点においてそれぞれ異なる方式で観測されることで得られるマルチビューデータに遭遇する. そのようなマルチビューデータから対象集合の性質を学習する枠組みとして, マルチビュー学習がある. マルチビュー学習は, 各視点における観測過程にそれぞれ1つの関数を対応させ, それらを同時最適化することで対象集合の性質を学習する枠組みである. その中でも, 部分空間学習, 距離計量学習の枠組みでは, 全てのマルチビューデータは同一の潜在空間上に分布する対象集合から生成されるという仮定の下で, 対象集合の位置関係の推定を行っている. 距離計量学習では様々な研究が存在するが, それらの中には観測過程が対象集合に依存する際にそれを考慮して対象の位置関係の推定を行っていものが見られなかった. 本研究では, 観測過程が対象集合に依存するこを考慮に入れた距離計量学習における対象の位置関係の推定精度が考慮に入れないものよりも向上するという仮説を立てた. その上, 仮説を検証するアプローチの一環として, 対象集合から抽出された複数の部分集合が主成分分析(PCA)によって変換され, ガウスノイズが加わることで生成されたPCAスコアセットから, 観測過程として対象集合に依存するPCAを考慮した手法と依存しない正射影を考慮した手法の双方で対象集合の推定と, 精度の比較を行った. 上記のアプローチの結果, 観測されているマルチビューデータが比較的少ない条件下では, 観測過程としてPCAを考慮した手法は, 観測過程に正射影を考慮した手法よりも有意に対象の位置関係の推定精度が向上することが分かった. そのため, 距離計量学習において, 観測過程が対象集合に依存している場合にそれを考慮することにより対象の位置関係の推定精度を向上させる傾向にあることを示すことが出来た.