光と熱の経時特性に基づく成分分解を用いた遠赤外照度差ステレオ法

池谷 信寛 (1651009)


照度差ステレオ法は,光の反射特性においてランバート拡散反射を仮定することで物体の法線ベクトルを推定する.しかし,可視光領域において光沢がある材質や半透明な材質の反射特性はランバート拡散反射を仮定できないため適用が難しい.また,可視光領域において黒色や透明な物体はそもそも反射光が観測できないため適用できない.本研究では,遠赤外光を利用することによって,材質の違いに頑健な照度差ステレオ法を提案する.遠赤外光は多くの材質において吸収され,熱に変換された後,再び放射される.単一の遠赤外光源で照明すると,その放射強度は間接的に表面法線に依存する.ただし,物体内部における熱伝導によって放射強度は空間的に広がるため,表面法線への依存性が弱まり,単純には照度差ステレオ法を適用できない.そこで,放射強度の時間変化を計測し,放射成分をその経時特性に基づいて分解することによって,表面法線依存成分を取り出す.実験では複数の材質で実験を行い,本手法の有効性を検証した.