プロジェクタカメラ系による見かけの制御のための 動的な光環境にロバストな反射率推定

秋山 諒 (1551002)


色と質感は物体の見かけを構成する重要な要素である. プロジェクションマッピング技術では,実物体の色や質感を光重畳投影することでピクセルレベルで見かけを操作できるツールとなっている. さらにカメラを導入することで対象の変化に応じて投影光を調整するインタラクティブなシステムとしてプロジェクタカメラ系の研究は多く行われている. このインタラクティブなプロジェクタカメラシステムも,投影対象のオリジナルの色や質感を捉えて,擬似的に色や質感などを変えるといった見かけ制御の研究が進んでいる.

そのようなプロジェクションを行う際にはキャリブレーションを行う必要がある. カメラとプロジェクタの幾何的関係を求める幾何キャリブレーションは問題ないが,色キャリブレーションは環境光の変化すると再度行う必要がある. カメラの捉える色は,光の色と反射する物体の色によって決定するからである. 光環境が変化する場合に,変化するたびにキャリブレーションを行うのは現実的ではない. そこで我々は環境光変化にロバストな反射率推定手法を提案する. 本研究では,プロジェクションを時分割に切り替え,異なる2つの状況の光をカメラでキャプチャすることにより反射率と環境光の両方を同時に推定する手法を提案した. その上で,従来の反射率推定手法との比較実験を行い,白色光の照度変化においては環境光の影響を受けずに反射率推定ができることが確認できた. ただし,対象が黒など反射率が低い場合,推定される反射率がゼロ付近で不安定となりプロジェクションが荒れてしまうという課題も残ることを確認した. また,本手法により推定された反射率に基づいた見かけ制御のアプリケーションについても紹介する.