神経細胞の突起は,信号を入力する樹状突起と信号を出力する軸索に機能分離している.しかし,神経細胞の発達過程では,突起の機能分離はされていない.神経が1本の突起を軸索にする過程は,自律的な対称性破壊であり,その原理を解明することは神経回路形成の理解に役立つ.%本研究では,神経の対称性破壊による複雑化の原理と,1本の突起の継続的な伸長と他の突起の伸長抑制の2つの過程に分けて数理的に解明した. 一般的には対称的な形が安定だが,神経細胞の樹状突起は非対称な形で発達し,そのうちの一つが軸索になる.なぜこの非対称な形が安定なのでしょうか.本研究はこの問題に数理モデルによって取り組み,その安定性と突起伸長促進の数理構造を解析した. まず,先行研究の数理モデルを用いて,突起の力学的制約と保存量による制約から安定点を計算した.1本が伸長しようとすると,非対称な安定状態になるが,これは力学制約が広がって偏りが発生することと,保存量の増加によって右上にシフトするためと分かった. 次に,突起の伸長が継続する理由を解析した.突起長と伸長分子の輸送速度の平面上で,突起が伸長する領域と退縮する領域を求めました.その結果,伸縮の境界と実際の輸送速度の交点を閾値として,突起長がそれ以上ならば突起伸長が継続することが分かった.