離散値入力制御のための強化学習量子化器

福見 渉 (1551088)


本論文では,制御対象の入力がON/OFFのような離散値に制限される離散値入力システムの制御を考える. 離散値入力制御では,量子化器を適切に設計して制御系に組み込むアプローチが注目されている.とくに,先行研究において動的量子化器の最適設計に関する成果が得られている. そこでは,制御対象の数学モデルを陽に用いて量子化器を設計している. そのため,モデル情報を正確に把握できない場合には,従来の設計手法を直接的に適用できないという問題があった.

この問題に対して,本論文ではモデルフリーな量子化器設計問題に取り組んだ. まず,制御対象の入出力データのみを用いて,適切な量子化器を設計することを考えた. まず,非線形プレフィルタと動的量子化器からなる量子化器を提案した. そして,モデルフリー手法である強化学習アルゴリズムを適用し,非線形プレフィルタの入出力特性を調整することで量子化器を設計する手法を構築した. さらに,提案手法の有効性を数値シミュレーションによって確認した.

本論文の提案手法はモデルフリーであるため,制御対象の線形性・非線形性を問わずに量子化器を設計できるという大きな利点がある.すなわち,本論文の成果によって,量子化器を用いた離散値入力制御の適用範囲を大幅に広げることができる.