関節運動制約を用いた2次元X線動画像からの胸郭3次元運動の復元

日朝 祐太 (1551083)


先行研究としては,これまでに,X線動画像や4DCT画像を用いた肋骨の運動の解析手法が報告されている. しかし,4DCT画像を用いると被曝量が大きくなり,複数回の撮影が必要な経過観察などに用いることは困難である. そのため,通常臨床で実施可能な胸郭運動の4次元での解析法は確立されていない.これを解決するための方法として, 2D3D位置合わせ手法が存在する.この手法は,1方向あるいは2方向のX線動画像を用いる方法である. 胸郭など撮像範囲が広い場合は,より被曝量を少なくするために,1方向からのX線動画像のみが用いられ,奥行き方向の情報が欠落してしまうため,位置合わせが困難になる. また,肋骨の個々の動きの推定が特に難しい理由は,胸郭のX線画像では複数の骨・気管支・血管が重なって描出されるためである.

本研究の目的は,ある一時点で撮影したCT画像とX線動画像のみから,低被曝に肋骨の運動解析を行い,呼吸器疾患の定量的評価を行うことである.申請者は各肋骨が関節を介して脊椎につながっており, 自由に動くわけではないという解剖学的な知識に着目し研究を行ってきた.つまり,肋骨の運動の解析に対して,2D3D位置合わせにおける制約条件として, 一軸周りの回転をする肋骨の運動モデルを提案した.また,本手法の有効性を確かめるために生成画像および実際のX線画像を用いた検証実験を行った. 本研究の特色は, 1方向からのX線動画像しか用いずに4次元的な肋骨の動態を定量的に解析可能とすることで,検査に必要な被曝量を大幅に低減した点にある. また,解剖学的制約条件に着想し,関節による拘束を考慮した最適化の実装を行った. 以下の二点を実験的に示した.1)関節の制約を用いると,位置合わせの頑健性が向上した,2)1方向からのX線動画像でも十分な精度が得られた. また,こういった関節による拘束条件は,膝関節,股関節といった他の関節においても同様にその効果が期待される.