通信遅延・センシング障害の下での状態推定

能登 健太朗 (1551075)


近年,外部センサやネットワーク通信を介したオープンな計測環境や制御の技術が注目を浴びている. このようなシステムは設備投資や保守点検のコスト削減の利点がある反面,通信遅延や信号の取得失敗といった 特有の問題を有する. 本論文では,不規則な遅延/信号の取得失敗という2つの問題各々に対する状態オブザーバの設計方法を議 論する.

共有のネットワークを利用する場合,その混雑具合に応じて信号送信時の遅延時間は不規則に変動し,制御性 能の劣化を引き起こす. この問題に対し,信号の遅れ時間に応じてゲインを切り替える切替え型オブザーバによる補償法が提案されてい る. しかし,従来法では信号の再利用を前提としているため計測値のノイズに敏感になってしまうという欠点があった. また,遅延のモデルを状態変数に含めた拡大系を用いるため,考える状態の次数が高次元になり,ゲイン設計問 題の求解が高負荷であった. そこで本研究では従来法を,1)再利用をしない方法,2)拡大系を用いない方法へとそれぞれ改良する. 1)では従来法の拡大系を拡張する. 2)では時間を遡る技法を用いて対象と同一次元のオブザーバを構成する.

センシング障害などの理由で信号の取得に失敗した場合,次の信号を受信するまでの間,過去に取得した信号を 再利用することがある. これは,サンプリング制御においてサンプリング周期の一時的な延長を意味する. この延長は予期せず起こり,いつまで延長するのか未知であるため,一定周期を前提に設計されたオブザーバでは, 最悪の場合推定誤差が不安定化してしまう. そこで本論文では,サンプリング周期が不定期である場合にその上限を設定し,その範囲内で安定性を保証する 問題を考える.