正対する放物面鏡を利用した狭被写界深度撮影システム

西 諒一郎 (1551071)


狭被写界深度撮影は焦点を合わせた特定の奥行き範囲の物体のみを鮮明に撮影する方式であり,前景背景分離や半透明物体の内部構造の解析などに使用される. 被写界深度の浅い光学装置としては顕微鏡が代表的であるが, 顕微鏡は細胞などの微小物を撮影対象としており,一般的な大きさの物体を撮影できる開口数の大きなレンズの作成は困難である. このような問題に対して,複数台のカメラまたはミラーを用いることで仮想的に開口数を大きくする合成開口法が提案されている. しかし,複数台のカメラを用いる場合にはカメラセッティングやキャリブレーションが複雑で時間がかかり, ミラーを用いて複数視点の画像を取得する場合は,一台のカメラによって複数視点からの画像を取得するため解像度が低下する問題がある.

本研究では,撮像素子を露出したカメラ1台と2枚の放物面鏡を向かい合わせに設置した狭被写界深度撮影装置を提案する. 提案撮影装置は,複数台のカメラを用いた合成開口法と比べカメラセッティング時間が不要で,ミラーを用いるた合成開口法と比べて解像度の高い画像を取得することが可能である. また,提案装置特有の撮影対象の位置に依存したぼけ方を示す点拡がり関数(PSF)を利用した,特定層のみの画像の推定を行う鮮明化処理の提案も行う.

本発表では,提案撮影装置の特徴および構成について説明し,位置依存PSFを用いた鮮明化処理について述べた後, 提案装置を用いた撮影実験の結果を示す. シミュレーション環境実験では,層構造物体の特定層に焦点を合わせて撮影を行った結果を示し, PSFを利用した最適化を行うことでより鮮明な特定層画像の抽出を行えることを示す. また,実環境では試作した撮影装置を用いた撮影および, 計測したPSFを利用した鮮明化処理を行い,特定層画像の抽出結果について述べる. 最後に,シミュレーションと実環境実験における結果の差異とその原因について述べる.