心臓MRIにおけるECV Map作成のための動き補正アルゴリズムの検討

中山 昴 (1551069)


現在, 心臓疾患は世界で最も死亡者数が多く, その約8割が心筋梗塞等の虚血性心疾患であり年間約600万以上の人が亡くなっている. 心臓MRIは放射線被ばくのない非侵襲的な画像診断装置であり, 心臓MRIで得られる機能画像と形態画像は虚血性疾患の診断に有効である. また, 心筋組織細胞外液分画(Extracellular volume fraction : ECV)を画像化したECV Mapは心筋の線維化, アミロイド沈着, 心筋浮腫の程度を定量的に評価可能であり虚血性心疾患に高い診断能を示す. ECV Mapは心電図同期, かつ息止め下で撮像された造影剤投与前後の心筋組織と血液組織のT1値をヘマトクリット値で補正することでピクセル毎に算出する. しかし, 息止めが不十分な場合や造影剤投与前後の2回の撮像で心臓の呼吸停止位置が異なる場合心臓の位置ずれが発生し, ECV Mapの精度が低下する. そのため, ECV Map作成前に息止めが不十分な画像を除外し, 心臓を位置合わせする必要がある. さらに位置合わせの課題として, 造影剤投与前後の2回の撮像は造影剤の影響でコントラストが異なること, 心位相が完全に一致しないことと, 横隔膜の影響で形状が完全に一致しないことが挙げられる. 本研究では高精度なECV Map作成のための位置ずれ補正アルゴルリズムの検討を目的とする. まず自由呼吸が含まれた画像を推定するために, 肺と肝臓を関心領域としてモンタージュ画像を作成し, 息止め画像と正規化相関を求めることで自由呼吸が含まれた画像を除外する. 次に, 呼吸停止位置による心臓の位置ずれは抽出した左心室内腔領域を円に近似し, その中心位置の差分から位置ずれ量を算出することで補正する. 提案手法を適用した結果, ECV Mapは補正前と比較して良好な改善が見られた.