認証機能付き白板を考慮したビザンチン環境におけるモバイルエージェント集合アルゴリズム

土田 将司 (1551063)


本発表では,ビザンチン環境において,分散システム上に存在する複数のモバイルエージェント(以下,エージェント)を1つのノードに集合させるアルゴリズムを提案する. エージェントとは,ネットワークを自律的に移動し,様々なタスクを行うソフトウェアである. エージェント自身が情報を収集,解析を行いながら多数のコンピュータ(以下,ノード)を移動するため,ノード自体は情報交換を行う必要がなくなり,分散システムの設計が容易となる. また,エージェントを複数協調動作させることで,効率的に分散システムを運用することができる. そのため,現在複数のエージェントを協調動作させるアルゴリズムの開発が盛んに行われている.

エージェントを協調動作させるための基本的なタスクの1つとして,集合問題が考えられている. 集合問題とは,初期状況において分散システム上の任意のノードに散在しているエージェントを同一のノードに集合させる問題である. エージェントが1つのノードに集合することで,エージェント間での情報交換を行うことができ,協調動作を行いやすくなるという利点がある.

本研究ではビザンチン環境における集合問題について考える. ビザンチン環境とは,アルゴリズムに従わず,任意の動作を行うことができるエージェント(以下,ビザンチンエージェント)が存在する環境である. 本発表ではビザンチンエージェントが存在したとしても集合を行えるアルゴリズムを提案する. 提案するアルゴリズムでは,同期ネットワークにおいて,各エージェントが固有のIDを持ち,各ノードには認証機能付きの白板があり,ビザンチンエージェントが高々$f$個存在するネットワークにおいて, 全ての正常エージェントを$O(fm)$時間で集合させることができる($m$はネットワーク中の辺の数). ここで認証機能付きの白板とは,ノード上に存在する各エージェント専用のメモリ領域のことである. 従来手法では白板を用いずに$\tilde O(n^9 \lambda)$時間($n$はノード数,$\lambda$は最長IDの長さ)で実現しており,提案手法は白板を用いることで大きく集合に要する時間を削減する.