線形計画法に基づく実用的な予測ガバナの設計
立花幸子 (1551059)
本研究では,動的システムの追従制御において,
目標値として予測誤差を含む予測値が用いられる場合を考える.
予測値で駆動されたシステムの出力は,予測誤差がない真の目標値が利用できる場合の出力と異なる振る舞いをする.
予測値の予測誤差が大きいほど,それにともない制御性能が劣化してしまう.
この問題を解決するために,先行研究では最適予測ガバナと呼ばれる予測値整形機構が提案されている.
最適予測ガバナは予測値を整形することで,システムの出力を
正確な目標値で駆動される場合の理想的な出力に最良近似させることができる.
一方で,最適予測ガバナは入力制約があるシステムや非最小位相系に適用できない場合がある.
つまり,最適予測ガバナが適用できるシステムは限定的であり,実用的とはいえない.
そこで,本研究では,
実用的な予測ガバナの設計方法を提案した.
まず,予測ガバナの入出力ゲインを導入した.
そして,ゲイン制約と予測ガバナの安定性を同時に考慮した予測ガバナの最適設計問題を定式化した.
さらに,最適設計問題を線形計画問題に帰着させ,線形計画問題を解いて予測ガバナを設計する方法を提案した.
これにより,
最適予測ガバナが適用不可なシステムに対して,提案法で設計した予測ガバナを適用することが可能となる.
また,最適予測ガバナは
予測値を整形する際に,
1ステップ遅れて取得できる過去の正確な目標値を利用していたが,
本研究では,Nステップ前の正確な目標値が利用できるように予測ガバナを拡張した.
そして,数値例を通して提案法で設計した予測ガバナの性能を確認し,
メカトロニクス系の遠隔操作制御に適用して,実機実験にてその実用性を検証した.