マインド・ワンダリング時の脳活動パターン解析による思考内容のデコーディング

諏訪部開 (1551056)


我々は覚醒時のおよそ半分の時間で,現在目の前の状況とは関わりのない思考を頭に思い浮かべており,その現象はマインド・ワンダリングとして知られている.先行研究において,マインド・ワンダリング時の脳のネットワークについて調べられ,マインド・ワンダリングは認知や感情に関する機能を持つと示唆されているが,その思考内容が,脳内でどのように表現されているかについては明らかになっていない.しかし,それが明らかになれば,マインド・ワンダリングの思考内容を読み出すことができ,マインド・ワンダリングの機能のさらなる理解や,思考内容を読み取って挙動を切り替えるような装置の開発に役立つと考えられる.そこで,本研究では,マインド・ワンダリング時の思考内容のデコーディングを行うことを目的とし,画像を見た時の脳活動と意図的な想起時の脳活動を機能的磁気共鳴画像法によって撮像し,機械学習の手法を用いて2つのデコーダを構築した.この2つのデコーダは,高次視覚野やデフォルト・モード・ネットワーク内の領野における脳活動を用いた場合に,チャンス・レベルを超える正答率でマインド・ワンダリングの思考内容を判別することができた.この結果により,タスクに関連した思考と関連しない思考が共通した脳活動パターンで表現されており,脳活動のみを用いたマインド・ワンダリング時の思考内容のデコーディングが可能であることが示唆された.