近年,Googleストリートビューに代表される,実環境で撮影した全方位画像を入力として,ユーザが指定した自由な方向の映像提示を実現するアプリケーションが普及している.このようなアプリケーションでは全方位動画像を入力として用いることでシーン中の“動き”を再現し,ユーザにより高い臨場感を与えることができる.しかし,動画像を用いたストリートビュー表示を実現するためには,地点ごとに長時間の定点撮影を行うことが必要となり,撮影コストが膨大になる問題がある.また,動画像の再生完了時には冒頭からの繰り返し再生を行う必要が生じるが,動画像の最終フレームから初期フレームへの切り替え時に映像の不連続が生じる場合があり,臨場感が損なわれることが考えられる.
これらの問題を踏まえ,本研究では,動画像を用いたストリートビューシステムを構築するための撮影コストの低減および動画像の繰り返し再生における不連続の解消を目的として,複数の地点で非同期に定点撮影した動画像から任意に定めた視点位置での不連続を抑えた繰り返し動画(シネマグラフ)を生成する手法を提案する.提案手法では,まず,複数の地点で異なる時刻に定点撮影した動画像に対してそれぞれシネマグラフを生成する.次に,複数画像を用いて対象のシーンの三次元形状を復元した上で,自由視点画像生成手法を用いて生成したシネマグラフを対象視点からの見えにワーピングする.最後に,ワーピング後のシネマグラフ群から,入力視点の見えの近さとテクスチャの連続性を考慮してテクスチャ選択を行うことで任意地点でのシネマグラフ生成を実現する.実験では,一台の単眼カメラまたは全方位カメラで撮影した動画像を用いて仮想視点におけるシネマグラフを生成し,他の手法を適用した生成結果と比較する.
本発表では,実験による比較結果を示し,結果に対する考察と今後の予定について報告する.