単純X線画像からの立位における股関節姿勢の大規模解析を目的とした2D-3D位置合わせの自動化
児山 昂生 (1551045)
人工股関節全置換術においては,患者固有の股関節の姿勢解析が手術の術前計画立案や術後経過の評価に有用な情報となる.
インプラント(人工股関節)の設置位置や角度の決定には,骨盤傾斜角や大腿骨回旋角などの股関節の姿勢を表現する3次元角度が重要な要素となる.
通常,インプラントの設置位置は仰臥位での骨盤と大腿骨の姿勢を基準に設定されるが,仰臥位と立位では荷重の掛かり方が異なるため,骨盤と大腿骨の姿勢はそれぞれ変化する.
立位と仰臥位の間の姿勢変化に伴う骨盤傾斜角と大腿骨回旋角の変化がインプラントの至適設置角度に影響を及ぼす重要な因子となる.
この変化の要因解析のために年齢別や性別,疾患別等の解析が求められているが,立位における股関節姿勢の解析は,CT画像から行うことができないという問題がある.
この問題に対して,複数枚のX線画像を用いた解析手法が提案されているが,特殊な撮影装置や撮影装置のキャリブレーションが画像取得の際に必要であるため,適用可能なデータが少なく,解析に十分な数の症例の解析は報告されていない.
本研究では,臨床で広く用いられる単純X線画像とCT画像から,X線画像撮影時の患者姿勢を推定する2D-3Dレジストレーション手法に着目し,大規模な患者データに対して立位における股関節姿勢を解析することを目的とした.
大規模患者データを対象とした解析では,計測対象データの量やその増加に対応するため,自動計測が求められる.
また,患者の姿勢や体格差等のバリエーションに対応できるロバストな手法が望ましい.
本研究では,局所最適解に対してロバストな性質を持つ2D-3Dレジストレーション手法に着目し、
CT画像からの骨盤及び大腿骨領域の自動抽出手法と組み合わせることで、立位における股関節姿勢の解析の自動化を行った。
また、提案手法の精度をシミュレーション実験で検証し、
実X線画像に対する解析の評価を、医師が手動で計測した骨盤傾斜角と提案手法により自動計測した結果とを比較することで検証した。