MPEG-DASHにおける帯域競合時のQoEを改善するビットレート適応アルゴリズムの提案

高 尚昊 (1551042)


近年,インターネット上で提供される動画配信サービスにおいて,利用可能なネットワーク帯域に応じてビットレートを選択できるストリーミング方式である,MPEG-DASHへの対応が進んでいる.しかし,MPEG-DASHはボトルネックを共有するホームネットワークなどで利用した場合,互いの利用帯域が競合することでビットレートの選択機能の不全を招き,動画視聴のサービス品質に様々な問題を与えることが分かっている.それらの問題を解決して動画サービスの利用品質を向上させるために,既存の研究ではサーバやネットワーク機器でのトラフィックシェーピングや,ネットワーク帯域ではなく自身のバッファ状況を基準としたビットレート選択のアルゴリズムなどが提案されている.本研究では,特に動画視聴のサービス品質に大きな影響を与えると思われる,選択ビットレートの激しい振動とバッファ枯渇による再生停止時間の問題に着目し,それらの問題を改善するためのビットレート適応アルゴリズムを提案した.提案手法は,MPEG-DASHの参照実装プレイヤーであるdash.jsに実装し,ホームネットワークを想定した環境で実際に動画を再生して,その有効性を評価した.その結果,比較に用いた既存のビットレート選択アルゴリズムに比べて,ビットレートの振動を最大約46%,再生停止時間を最大約40%減少させることに成功した.