文字補正のための酸化物半導体シナプス素子を用いたニューラルネットワークの開発と評価
亀田友哉(1551036)
脳の神経回路をモデルとしたニューラルネットワークは自己学習能力があり,文字認識や画像認識など様々な分野に用いられている.しかし,ソフトウェアによる現在のニューラルネットワークでは計算量が多く,消費電力も大きいため,IoTなどの独立したシステムとして個々の機器への組み込みは難しい.高性能化・大規模集積化・低消費電力化などが可能となり,集積回路での作製に適した構造をもつニューラルネットワークをハードウェアレベルで作製することで,これらの問題を解決できる.特に,低温での作製が可能であり,また3 次元化による超大規集積化も可能となる酸化物半導体シナプスを用いることで,より大規模なニューラルネットワークを構成可能となる.実機で作製するに当たり,最適な構造や最適なデバイスを選定する必要があることからシミュレータを開発し,今回は文字補正システムに利用した場合での評価を行った.セルラニューラルネットワークとホップフィールド型ネットワークの構造を酸化物半導体シナプスを用いて作製することを提案し,シミュレーションにより,文字を学習できていることを確認できた.文字補正するために必要となる構造としてセルラニューラルネットワークでは上下左右および斜めの接続構造が望ましく,デバイスとして数倍の特性変動するものが望ましいことを明らかにした.その後,実機での動作も試み,実際のデバイスを用いた場合でも1 文字だけではあるが補正でき,学習できていることを確かめることができた.