IEEE 802.11ah物理層向けViterbiデコーダの小規模・低消費電力実装に関する研究

加藤大真 (1551033)


IoTでは通信電力の削減が非常に重要である.現在,IoT向けに策定中の Wi-Fi 規格, IEEE 802.11ahが有力視されている. 11ahの物理層は屋内向けの高速な通信規格である11acと同構成のものをクロックダウンして用いられることが決まっている. クロックダウンによって低消費電力化を見込めるが, 11acの物理層は速度を優先した設計であるため, 更に小規模化・低消費電力化に向けた設計が望ましい. この物理層に含まれる Viterbiデコーダはエラー訂正に必須であるが,従 来のものは速度の要求から面積や消費電力が大きい. 本研究では回路を小規模化するために, M-アルゴリズム (MA)とよばれるViterbiアルゴリズムの計算量削減手法を用いる. この手法は計算量の削減に有効である一方, ビット誤り率が増加する傾向から従来は採用されなかった. しかし本研究では, MAのパケット誤り率に着目し, 通信性能を犠牲にすることなくViterbiデコーダの面積や消費電力を削減する. 効率的な設計のために, ソフトウェアシミュレーションによって11ahに最適なMAのパラメータを明らかにした上で, 小規模・低消費電力に特化したViterbiデコーダの回路を提案・設計した. その結果, 提案の回路は従来と同等のパケット誤り率を維持したまま, 回路面積を 7.8%, 消費電力を64%削減し, IoTデバイスの通信電力の削減に貢献できることを明らかにした.