多階層統計形状モデルの最適階層選択による画像からの疾患骨盤領域自動抽出の精度向上

大谷 悠太


人工股関節全置換術などに対するコンピュータによる術前手術計画システムを構築するためには、CT画像から病気で変形した骨盤領域と大腿骨を高精度で抽出する必要がある。人工股関節全置換術対象の骨盤は病気で関節部が変形しているため、大腿骨との境界がCT画像上で不明瞭であり高精度な抽出が難しい。先行研究では、変形系疾患Crowe分類2以上の症例の骨盤抽出精度が他の疾患症例と比較して1mm程低下していた。Crowe分類2以上の骨盤は他の疾患と比較してその関節部が特に大きく変形してしまっていることが原因として考えられる。本研究は変形系疾患Crowe分類2以上の症例の骨盤抽出精度の向上を目的とする。多階層統計形状モデルの表現性能である汎化性と特異性に着目し、境界が明瞭な領域に対しては汎化性が高いモデル、不明瞭な領域に対しては特異性が高いモデルを用いることで骨盤領域を抽出する。本研究の新規点は、疾患骨盤の領域によって最適な階層を決定することで、領域ごとに最適な多階層統計形状モデルを用いた抽出が可能な点である。同一条件で従来法と提案法によるcrowe分類2以上の症例の骨盤抽出実験を行い、提案法の有効性を検証した。実験の結果、提案法の平均ASD値が2.535であったのに対し、提案法は2.053であり抽出精度の向上が有意に認められた