散乱現象を手掛かりとしたToF カメラによる画像の鮮明化と半透明物体の分類手法

岩口 優也 (1551015)


シーンや物体に,光を照射して反射してくる光は大きく分けて散乱光と直接光の2種類に分類することができる.物体内部や散乱媒体から反射してくる光を散乱光,被写体から反射してくる光を直接光とすると,カメラが観測するタイミングと特性が異なる.本研究では,散乱光と直接光の受光タイミングと特性の違いから,画像の鮮明化と半透明物体の分類を行うことを目的とする.しかし,光は非常に高速であるため,受光タイミングの違いを一般的なカメラでとらえることは難しい.そこで,本研究ではTime-of-Flighカメラを用いている.

ToFカメラとは物体に光を照射し,反射光を観測するまでの時間差を計測することで,物体までの距離を計測可能なカメラであり,時間軸情報を高分解能で計測できる新たなデバイスとしても近年注目を集めている.

霧や雨といった散乱媒体が存在するシーンでは,被写体を撮影した画像は不鮮明になってしまう.ToFカメラの一般的なカメラと異なった撮像過程に注目することで,散乱媒体からの反射を抑えた直接光成分のみで構成された画像を取得可能であることがわかっている.しかし,直接光のみを撮影した画像は散乱媒体の強度によっては見えづらくなってしまう. そこで,散乱媒体の強度によらない一様な見え方を提示する.その結果として,鮮明化では,カメラが観測する散乱光と直接光の受光タイミングの違いを利用して,直接光を取り出すとともに,シーンによらない一様な見え方を実現できた.

材質分類では,同じ色や同じ形状の材質を画像から分類することは困難である.そこで,光を照射して観測される物体固有の散乱特性の違いによって分類が可能ではないかと考えた.なぜなら,ToFカメラで物体の距離を計測すると,内部で起こる散乱度合が違うため,各物体で計測距離が変化してしまう性質があることがわかっている.この性質を逆手に取り,特徴量として扱うことで,材質分類を行うことができた.

散乱の特性はシーンや対象物体によって異なり,ToFカメラという超高分解能で撮像可能なデバイスを用いることで,一般的カメラでは取り出すことの難しい固有の情報を得ることができた.